花の居場所 – 20年目のクリスマスで思うこと

花の居場所 – 20年目のクリスマスで思うこと

 フラワーアレンジメント教室を開いて、20年以上が過ぎました。振り返ればクリスマスパーティーの規模が最大の頃は、参加者が130名になった年がありました。フィンランドからオペラ歌手を招き、イタリアンレストランを借り切って、そのシェフを口説いてフィンランド料理を出してもらった年でした。ワインの輸入業者、政府観光局、航空会社や旅行代理店などの関連会社も多く協賛してくれました。
 20世紀から21世紀への移り変わりと共に、経済低迷が、人々の花への関心を低下させ、花業界全体が力を失っていきました。こうした厳しい時代を紆余曲折ながらも、20年目を迎えるまで継続できたことは幸いでした。
 花に関わってきて思うことは、経済と共に人々の花への関心が低下してきたことです。企業は新入社員の採用を控え、事務所移転の会社は、狭い場所や交通のアクセスの悪い場所へ移転するようになって、会社の受付窓口には、人の代わりに内線電話が置かれるようになり、オフィス内に花飾る場所がなくなりました。銀行の窓口の生花が造花のとって替り、21世紀になったら造花すら置かれなくなりました。 
  私たちの住まいも変化して、床の間も、和室のない家やマンションも増えました。花を生ける若者が少なくなって、花の名前を知るも人も少ないのです。若い母親が花を飾らないのだから、次世代への継承は容易ではなく、花への関心が益々薄れるのは当然でしょう。 
  しかしながら、花業界においては、バイオテクノロジーの研究成果でしょうか、毎年新種の花を誕生させています。市場は輸送手段の拡大や植物検疫の効率化などで、世界各地から容易に花が輸入されるようになりました。知らぬ間にスーパーマーケットでは、コロンビア産やイスラエル産の薔薇が売られています。花屋の冷蔵庫だけに高価な国産のバラが売られていて、その出番は極めて少なくなっているので、花屋によって売れない薔薇を用意しない店もあります。 

クリスマスアレンジを教えている様子

  少し視点を拡大してみると、都心では新しいビルができる度に、屋上緑化や共有の広場に緑の植物たちが植えられるようになりました。ビルを丸ごと植物で囲っているところもありますし、屋上菜園なども誕生しています。確かにグローバルな視点では、地球温暖化がヒートアイランド現象などを起こしており、建築や土木の技術を駆使し、省エネルギー化を進めることは重要です。こうした緑の重要性が浸透しているのは、歓迎したいのですが、身近なところで花の居場所が失われているのは残念なことです。