千鳥ヶ淵公園のさくら色
今年も「千代田区のさくら祭り」で千代田区のさくら染ハンカチを販売します。その制作現場をご紹介します。
まず、材料のさくらの枝は、ブログで紹介したとおり昨年11月に千鳥ヶ淵公園の桜の枝をいただきました。
最初はその枝を煮て、染色液を作りました。煮だした液は、赤く透明な液体で、匂いは木の煮た悪のある匂いで、あまりいりいものではありません。煮だした液を1か月以上か月以上保存しておきました。1か月以上か月以上寝かせると、液は酸化によりもっと赤くなります。
今回も桜の刺繍が施されたハンカチを染色しました。場所は自宅の台所で染色しています。染色にはいろいろな方法がありますが、台所で気軽に染めることをご提案しています。
綿ハンカチは、染色液をすって、次第にさくらの色に染まっていきます。これが千鳥ヶ千鳥ヶ淵公園のさくらの色です。
煮詰めた後、次は媒染というという手段を施します。媒染というのは、布に染めた色を落とさないようにすることです。媒染液には、茄子の漬物をよりきれいに仕上げるときに使うミョウバンを使用します。スーパマケットで販売しているものです。
ミョウバンを小さじ半分くらい水に溶かして、その中に染まったハンカチを入れます。
20分くらい漬け込漬け込むと、染色直後の状態より色が変わってきます。
ミョウバンに浸したさくら染ハンカチを、最初に煮だした液体に再び戻して、煮詰めます。ミョウバンに浸した布は、染色液を更に吸収して、どんどん色が深く濃く染まっていっていきます。こうすることで色落ちするのを止める効果がでます。
この後、染色液冷めるまでお鍋の中にハンカチを浸しておきます。もっと濃い色にしたいときには、新しい液に再び布を浸して、煮詰めていきます。色むらを出さないためには、煮だしているときに絶えず布を動かしておかねばなりません。
千代田区役所から桜の枝をいただき、染色を施し、それを商品化して販売できるまでに要する時間は、およそ10時間以上です。手間暇を惜しまない昔ながらの染色には、人の愛情がたくさん詰まっております。
今年のさくら染も淡いピンクに染まりました。これらを心を込めて染めており、1枚ごとに色がきれいに仕上がっていくのが楽しくもあります。
日本の染色は、草木で染めるものが一般的でしたが、明治時代になって化学染料が普及するにつれて、草木で染めたものに触れることもなくなりました。
草木染は、時間をかけて染めても、長い時間紫外線にあたると退色するのが欠点で、しかも大量生産ができませんから、近代化の時代に忘れられました。
近頃は大量生産の商品であふれており、昔ながらの手作りが貴重なものと気づく人も増えております。東京にはさくらが多く植えられています。私の染めた「さくら染ハンカチ」は、千代田区のさくらの枝の色であり「東京のさくら色」です。この手作り品をお求めいただく方には、ぜひ大切に使っていただきたいと願がっています。